仕事から一歩離れた技術の鍛錬スペース、J Labとは?|探訪 J Lab ❶

2024/01/15

J Labは当社の社員が自由に参加でき、仕事から離れて注目すべきIT技術を知り・学び・実践できる「場」で、30年以上も続いてきた取り組みです。J Labの現在と昨年(2023年)に新たにスタートした「J Lab Executive」について、J Labの創設から関わる高村宏氏(株式会社Ikkoh)と、当社社長の深井淳と常務執行役員の木島康行に話を聞きました。

深井 もう30年ほど前になりますが、クレスコ・ジェイキューブの前身の1社であるアルスで、新しい技術が登場すると、当時日本IBMに在籍しておられた高村さんに来ていただいて解説してもらうということを始めました。それが継続的に20年以上も続いて、2018年に高村さんが日本IBMを退社されたタイミングで「ARSLab」(アルスラボ)に改称し、2022年に3社が合併してクレスコ・ジェイキューブになったので「J Lab」として新しいスタートを切りました。ARSLabへ改称するときは、高村さんから「新しいことをやりましょう」という提案をいただきましたね。

高村 そうでした。以前からの取り組みをシステマティックに発展させたら、もっと面白くなるのではないかと考えたのですね。つまり私からの一方向の解説ではなく、ITの基礎や最新技術をメンバー自らが学習して実習をとおして血肉化し、さらにチャレンジ精神やチームワークを強くすることも学んで、場合によっては商品化の提案までできる場にしようという構想でした。新しい技術は座学だけではなかなか身に付きませんし、手を動かしてみると思うようにいかないということが多々あります。それを実践・実習を通して体得しようという狙いでした(図表1)。

深井 その構想をうかがって、ならば勤務時間中に定期的に開催するほうがよいだろうと考え、毎週火曜 午後1時~3時開催という現在の形になりました。

深井淳

代表取締役社長

高村 図表2がARSLab時代のテーマ一覧です。「チャットボット作成実習」はAIの基礎技術を学んでチャットボットを作成し、自然言語処理の仕組みを理解しようというもの。「Androidアプリ制作実習」はAndroidでUIを開発し、AWSでバックエンド側を開発するという実習。「センサー機器製作実習」ではRaspberry Pi(ラズベリーパイ)とセンサーを使ってトイレの空き状況を確認できるIoTシステムを試作しました。当時のアルスにはトイレが1つしかなく、在席しながら確認できたら便利だねという発想から製作したものです。また毛色の変わったものでは、「わかりやすい文章のコツ」というテーマで学習したこともありました。

J Labになってからは、図表3のとおりです。「ノーコード開発」はGlideを使ったノーコードの開発実習、「Webフレームワーク」はVue.jsやSpringBootなどのWeb開発フレームワークによる実践で、人事システムを例題として開発しました。

高村 基本はテーマごとにチームに分かれて学習します。各チームへの参加は誰でも自由で、複数のチームが並行して活動することもあります。1人が複数のチームに参加することも可能です。また、成果物を必ず残すということはせず、学習のプロセスを重視し、テーマを理解して血肉化することこそ大切と考えています。だからテーマについて期限やスケジュールを設けることはせず、流れに任せて、大きな“ヤマ”を越えたら次のテーマに移っていくという方法を取っています。最近のJ Labでは「生成AI」にフォーカスしていますが、これもどこまで続くかわかりません。

高村 宏氏

株式会社Ikkoh

木島 新しい技術は、登場した当初はネットにも情報が多くないので、その知識・情報にいち早く触れられ実習をとおして体験的に学べるのは大きな魅力です。たとえばチャットボットはARSLabで学習した当時はほとんど知られていなかったのですが、そのときに仕組みを原理的に学べたので、今はどんなチャットボット製品をみてもその特徴や機能について推測が働きます。また私はJava以外の言語にあまり触れてこなかったので、ARSLabでPythonがテーマになったときにトライしました。そのときは仕事で使うことは想定していなかったのですが、最近はPythonが必要になることが多くなり、かなり役立っています。仕事を続ける中で新しい言語を習得するのはややハードルが高いですが、ARSLab・J Labのような仕事から一歩離れて学習できる機会は非常にいい仕組みだと感じています。

深井 少し前に役員が集まったときに「アルス出身者は技術力が高い」という話を聞かされました。詳しく聞いてみると、いろいろな技術を知っているし、手も動かせるしセンスもいい、と言う。これはもうARSLabの効果だろうと思いますね。つまりARSLabがエンジニアに探究心や向上心を植え付けるインパクトになっていて、それが会社全体の技術レベルを上げることに寄与していたと思うのです。J Labの参加メンバーをみても、前向きで仕事ができる人が多いという印象ですし、ARSLab以前に参加していた人たちはその後、チームのリーダーになりマネージャーになるというように、会社を担う層に成長しています。

木島 参加メンバーを見ていると、現状の自分ではまずいとか、もっと成長しようという意識をもっている人が多い印象ですね。そして、そういう人たちがプロジェクトのコアなメンバーになっていくのですね。

木島康行

常務執行役員

深井 参加メンバーたちの仕事が忙しくなり、JLabに参加する機会が少なくなっていることです。参加する機会を増やすために仕事の割り当てを変えると仕事のほうに支障が出ることもあり、頭を悩ませています。

高村 それは致し方ないところもあるので、JLabのほうでは参加できなかったとしても何を学習したか、どのような成果があったかをトレースできるようにし、社員全員が閲覧できる社内Webに掲示しています。

深井 それと参加メンバーを増やすために参加しやすくする仕組みやルールを整備しようと考えています。現在、メンバーは社員の1割程度ですが、もっと増やして社内を活性化させたいですね。

深井 じつは毎週火曜日の午前に、高村さんと2人だけのミーティングを行っていました。主に高村さんからIT市場の話題や企業マネジメントにおけるトピックスなどをお聞きする場でしたが、私一人で聞いているのはとてももったいなく思い、エグゼクティブたちへ話していただけませんかというお願いをして実現したのがJ Lab Executiveです。昨年(2023年)6月にスタートさせました。

深井 役員全員と営業部の部長、マネージャーたちが参加しています。総勢10名程度になります。

高村 3つの柱を立てていて、1つは「技術トレンド」、2つ目は「経営(マーケティング)」、3つ目は人材育成や組織の活性化について考える「組織活性化・育成・やりがい・性格分析」です(図表4)。最近はもっぱらマーケティングを中心にした経営論の勉強会になっていて、人事制度・システムの認知度を高めるための方策や、人材・タレントマネジメント、お天気勤怠の活用、助け合い上手な組織にするにはどうすればよいかといったことを話し合っています(図表5)。

木島 やはり仕事から一歩離れ、仕事とは異なる観点で経営や組織を見つめ直すというのは、非常に貴重な経験だと思っています。また高村さんの視点設定や情報が毎回新鮮なので、私にとっては大きな刺激です。

深井 進め方や形はできているので、これをもっと社内に定着させ、幹を太くするように広げていきたいと考えています。

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