鈴木 由臣
株式会社クレスコ・ジェイキューブ
デジタルソリューションセンター
今回のIBM i技術情報は、テープ装置以外にIBM iのバックアップを取得する方法をご紹介します。
IBM iのデータのバックアップをテープ装置に取得している方が多いと思います。今回はテープ装置以外にIBM iのバックアップを取得できる「仮想テープ装置」について記載します。仮想テープ装置は、テープカートリッジにバックアップを取得するのではなく、ディスクにバックアップを取得する方法です。
仮想テープを使用するために必要な準備作業は次の4つです。
①仮想テープ装置記述の作成
②イメージカタログの作成(テープ装置に相当)
③イメージカタログにカタログ項目を追加(テープカートリッジに相当)
④イメージカタログと仮想テープ装置を紐付け
*上記の必要な準備作業は、一度実施すれば毎回実施する必要はありません。
下記に必要な準備作業の例を記述します。
①仮想テープ装置記述の作成
CRTDEVTAPコマンドのパラメータ:資源名(RSCNAME)に*VRTを指定して、仮想テープ装置を作成します。
CRTDEVTAP DEVD(TAPVRT01) RSRCNAME(*VRT)
WRKDEVDコマンドを実行して、タイプ:63B0 の装置記述が作成されたことを確認します。
WRKDEVD DEVD(TAPVRT01)
VRYCFGコマンドを実行して、上記で作成した仮想テープ装置をオンにします。
VRYCFG CFGOBJ(TAPVRT01) CFGTYPE(*DEV) STATUS(*ON)
WRKCFGSTSコマンドを実行して、仮想テープ装置がオンであることを確認します。
WRKCFGSTS CFGTYPE(*DEV) CFGD(TAPVRT01)
②イメージカタログの作成(テープ装置に相当)
CRTIMGCLGのコマンドを実行して、イメージカタログIMGCLG01を作成します。
CRTIMGCLG IMGCLG(IMGCLG01) DIR(‘/HOME/IMGCLG01’) TYPE(*TAP) CRTDIR(*YES)
WRKIMGCLGコマンドを実行して、イメージカタログが作成されたことを確認します。
WRKIMGCLG IMGCLG(IMGCLG01) TYPE(*TAP)
*この段階では、状況が「作動不能」で問題ありません。
③イメージカタログにカタログ項目を追加(テープカートリッジに相当)
ADDIMGCLGEコマンドを実行して、イメージカタログ項目を作成します。
ADDIMGCLGE IMGCLG(IMGCLG01) FROMFILE(*NEW) TOFILE(IMG001.ISO) IMGSIZ(100000) ALCSTG(*MIN) VOLNAM(VOL001)
*IMG001.ISOは、手順②のCRTIMGCLGのDIRで指定したフォルダーに作成されます。
IMGSIZは 48 ~ 1000000 メガバイトまで指定が可能です。
ALCSTGで*MINを指定した場合は、作成時点で初期設定に必要なディスク容量のみが確保されます。
*IMGSIZを指定した場合は、作成時点でIMGSIZに指定したディスク容量が確保されます。
VOLNAM はSAVLIBコマンド等でバックアップする時のテープ・ボリューム名になります。
カタログ項目はテープカートリッジに相当するものなので、複数追加することも可能です。
2つ目のカタログ項目を追加する例を下記に記述します。
パラメータのTOFILE と VOLNAM を1つ目のカタログ項目とは異なる値を指定します。
ADDIMGCLGE IMGCLG(IMGCLG01) FROMFILE(*NEW) TOFILE(IMG002.ISO) IMGSIZ(100000) ALCSTG(*MIN) VOLNAM(VOL002)
WRKIMGCLGEコマンドを実行して、イメージカタログ項目が作成されたことを確認します。
WRKIMGCLGE IMGCLG(IMGCLG01)
④イメージカタログを仮想装置と紐付け
LODIMGCLGコマンドを実行して、イメージカタログと仮想テープ装置を紐付けします。
LODIMGCLG IMGCLG(IMGCLG01) OPTION(*LOAD) DEV(TAPVRT01)
イメージカタログ(IMGCLG):手順②で作成したIMGCLG01
仮想テープ装置(DEV) :手順①で作成したTAPVRT01
WRKIMGCLGコマンドを実行して、イメージカタログと仮想テープ装置の紐付けされたことを確認します。
WRKIMGCLG IMGCLG(IMGCLG01) TYPE(*TAP)
状況が「作動可」、装置が「TAPVRT01」となっていることを確認します。
以上で、準備作業は完了です。
では、仮想テープ装置(TAPVRT01)にライブラリーをバックアップしてみましょう。
仮想テープ装置にライブラリーをバックアップ
SAVLIBコマンドを実行して、ライブラリーをバックアップする。
SAVLIB LIB(PXDLIB) DEV(TAPVRT01) VOL(VOL001)
装置:仮想テープ装置(TAPVRT01)を指定
ボリュームID:カタログ項目追加で指定したVOLNAMを指定
DSPTAPコマンドを実行して、ライブラリーがバックアップされたことを確認する。
DSPTAP DEV(TAPVRT01) VOL(VOL001)
ライブラリーPXDLIBは、イメージカタログ(IMGCLG01)のカタログ項目(/HOME/IMGCLG01/IMG001.ISO)にバックアップされています。
DSPLNKコマンドを実行して、IMG001.ISOファイルのデータ変更日/時刻がバックアップした日時であることを確認します。
DSPLNK OBJ(‘/HOME/IMGCLG01/IMG001.ISO’)
OPT=8 を指定して、次ページを表示
バックアップを取得したカタログ項目ファイル(/HOME/IMGCLG01/IMG001.ISO)をFTP転送などでPCサーバなどの外部サーバへコピーしておけばバックアップになります。
仮想テープ装置を利用してバックアップする時の注意点として、IBM iのIFS領域を使用しますのでIBM iのディスク使用率が逼迫しないように留意してください。