人事労務・給与業務を担当しているお客様へのお役立ちコラム|第3回 「103万円の壁」ほか、年収の壁について

2024/12/03コラム

河村 正雄

社会保険労務士法人ELMソリューションズ
代表社員・特定社会保険労務士

最近、何かと話題の「103万円の壁」、いわゆる年収の壁について見直しが検討されています。今回はその内容についてどういったものなのかをご紹介いたします。

1 「壁」とは? 

パートやアルバイトで働く人たちが、手取り収入の減少を懸念して、働く時間を自ら調整する、いわば“制約”となるものがいわゆる年収の壁と呼ばれるものです。

ニュースなどでは103万、106万、130万などといろいろな数字が出てきますが、どう違うのでしょうか。

いわゆる年収の壁、これには3つの種類が存在します。

2 1番目の壁|税金に関わる壁 

働く人は労働の対価として賃金を得ますが、賃金(収入)から必要経費を引いた所得に対して課税されます。会社員やパートの人の場合、必要経費に相当するものは「基礎控除」48万円と「給与所得控除」55万円の2つが予め決められています。収入が2つの控除額の合計103万円を超えた部分に対して所得税が課税されることになり、この103万円こそが壁の名前の由来となっています。

なお、税金は所得税だけではなく住民税についても考慮が必要です。一般的に100万円を超えると住民税が課税されることになっており、これを100万円の壁とも呼びます。

また、配偶者の年収により配偶者控除や配偶者特別控除控除が受けられますが、配偶者の年収が150万円を超えると控除が減少し、配偶者の年収が201万円を超えると控除がゼロとなるため、これを150万円の壁、201万円の壁とも呼びます。

3 2番目の壁|社会保険に関わる壁

社会保険の入り方はさまざまです。自ら被保険者となるケース、配偶者の扶養家族として加入するケースなどがありますが、これらにはいずれも年収の基準が決められています。

106万円の壁 
従業員51人以上の会社にお勤めの方は月額賃金8.8万円(年収計算で約106万円)、1週の労働時間20時間以上の場合、自ら被保険者として加入の義務が発生します。

130万円の壁 
上記以外の事業所、つまり従業員が50人以下の事業所にお勤めの場合、年収が130万円を超えると被扶養家族としての加入はできなくなり、自ら被保険者となる必要があります。

なお、こうした収入には交通費などは含まれません。

4 3番目の壁|配偶者手当に関わる壁

企業により異なりますが、配偶者手当、家族手当、扶養手当といった名称で扶養家族に対して手当を支給している企業が多く存在します。その支給に際しては、扶養家族の収入を基準としており、その多くの場合103万円もしくは130万円を基準としているようです。

5 壁をよく理解して収入増を目指す

税金の壁、社会保険の壁などさまざまな壁がありますが、等しく同じようにマイナス作用があるものとは限りません。

手取りに影響のあるもの、世帯としての手取りに影響しないものなど、その金額をよく理解した上で働き方を考え、また将来の給付である年金についても理解しておく必要があります。

出典:「年収の壁について知ろう」(厚生労働省)


河村 正雄

社会保険労務士法人ELM(エルム)ソリューションズ 代表社員
特定社会保険労務士、国家資格キャリアコンサルタント、医療労務コンサルタント、職務評価コンサルタント、相談のプロ
https://www.sharoshi-tokyo.com/index.html

東京都杉並区生まれ、成蹊大学法学部卒業
企業の人事・総務部門を経験した後、1994年東京で社会保険労務士事務所を開業。小売業、医療機関、警備業、教育機関等の労務管理、労務トラブルの解決、採用支援、定着支援等を得意とする一方、キャリアコンサルタントとして企業におけるキャリアカウンセリング、キャリアパス設計のためのコンサルティング実績も多数。また、分かりやすく楽しいセミナーをモットーに各種基調講演や行政機関、商工団体でのセミナーを多数経験。

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