経理業務を担当しているお客様へのお役立ちコラム|第3回 インボイス制度の経過措置の適用制限について

2024/11/05コラム

松本 直樹

松本直樹税理士事務所 税理士

経過措置と適用制限

インボイス制度の導入により、免税事業者からの仕入れは、原則として仕入税額控除の対象外となりますが、一定期間の経過措置が設けられています。この経過措置により、免税事業者等からの課税仕入れに対しても、一部控除が可能です。具体的には以下の通りです。

・令和5年10月1日~令和8年9月30日  仕入税額相当額の80%が控除対象
・令和8年10月1日~令和11年9月30日 仕入税額相当額の50%が控除対象

ところが、令和6年度の改正により、1人(個人事業主)または1社の免税事業者につき年間10億円を超える課税仕入れについては、その超える部分の課税仕入れは経過措置を適用できないこととなりました。この改正は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

影響と留意点

これまでは、少なくとも免税事業者であれば、一律に経過措置を適用すればよかったのですが、改正後は、特定の免税事業者から多額の課税仕入れがある場合、仕入税額控除を受けられない可能性があります。たとえば、建物等は金額が大きくなりやすいので、特に留意すべきです。

なお、10億円については、税込金額でカウントします。

消費税申告書様式の変更は?

この改正により、申告書様式の変更や追加が予想されますが、この原稿執筆時点(令和6年10月末)では、まだ公式には発表されていません。とは言え、以下のような変更や追加が見込まれています。

①10億円を超える課税仕入れの区分表示

免税事業者からの仕入れの扱いが強化されるため、申告書内に新たな区分が設けられる可能性が高いです。具体的には、課税仕入れ全体と10億円を超える部分を明確に分ける欄が追加されるでしょう。

②経過措置の記載欄

一部の仕入れに対しては、インボイス制度への移行に伴い、80%または50%の控除が適用される経過措置が存在します。これを記載する欄が新設され、支払対価の額や控除割合に基づいて集計する必要があります。

③付表や内訳書の更新

付表2-1や2-2のような控除対象仕入税額等の計算表に、新たに取引区分が追加される可能性があります。また、免税事業者等からの仕入れの合計金額や控除額を計算するための表も導入される見込みです。

今後の実務対応のポイント

①取引先のインボイス発行事業者登録の確認

取引先がインボイス発行事業者として登録されているかを適宜、確認する必要があります。取引先の登録状況は、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で確認できます。

②経過措置の適用に関する管理と集計

免税事業者からの仕入れに経過措置を適用する場合、控除割合が期間によって異なるため、会計ソフトでの自動計算が有効です。

③年間仕入れ総額の管理と10億円制限への対応

年間仕入れ総額が10億円を超えると、経過措置の適用が制限されるため、仕入金額のモニタリングが重要です。

2024年10月1日以降の消費税改正により、免税事業者との取引を含む申告業務が大きく変わります。インボイス発行事業者か否かの確認、経過措置の適用、10億円制限の管理など、事業者に求められる対応が複雑化するため、より会計システムの活用が不可欠になりそうです。


松本 直樹

松本直樹税理士事務所 税理士
https://minnadekomon.jp/

石川県金沢市生まれ
金沢大学法文学部経済学科卒業
卒業後、証券会社で債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
証券会社を退職後、税理士事務所勤務
1997年 税理士試験合格
1999年 松本直樹税理士事務所として独立開業
2006年 株式会社ケーエムエスを設立
2014年 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年 合同会社「みんなで顧問」設立
2023年 マンガ本「みんなの相続」出版
2024年 一般社団法人みんなで顧問設立

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