経理業務を担当しているお客様へのお役立ちコラム|第2回 改正電子帳簿保存法 ~結局どうすればよいのか?

2024/08/06コラム

松本 直樹

松本直樹税理士事務所 税理士

はじめに

昨年10月1日スタートのインボイス制度運用、今年6月からの定額減税、加えて改正電子帳簿保存法対応と、経理事務担当者にとって受難の日々が続いてます。特に、電子帳簿保存法(以下、電帳法)対応がもっとも悩ましいかもしれません。たびたび改正されており、国税庁サイトのQ&Aも頻繁に変更されてます。とは言え、改正電帳法は今年1月1日から運用をスタートしています。そこで、今回のコラムでは、電帳法対応の目的を明確にした上で、結局、どうすればよいのか? について述べてみることとします。

電帳法対応の目的はシステム通りの運用ではない!

国税当局の電帳法対応窓口では、国税当局内部からの問い合わせと、法人事務担当者や税理士からの問い合わせの内容に、かなりギャップがあるとのことです。国税当局内部からの問い合わせは、税務調査先のシステム(電帳法に対応したシステム)が複雑すぎて、調査効率が悪く、その状態で電帳法対応のシステムと認めてよいのか?です。一方で、外部からの問い合わせは、この方法、またはこのシステムで電帳法に対応したことになるのか? とのことで、経理現場の不安がうかがわれますね。経理事務担当者は、必死に電帳法対応を模索していますが、本来の目的は、「税務調査対応が可能か?」です。複雑なシステムルールにこだわって運用すると、調査現場で、データ照合に非常に手間がかかり、かえってトラブルになる可能性があります。

最新の緩和を含めた電子取引データ対応

基本的な話題になりますが、そもそも電帳法は「スキャナデータ保存」「電子取引データ保存」「電子帳簿保存」の3種類に分類されています。このうちもっとも重要なのは、「電子取引データ」ですね。つまり、メールその他で受け取った取引情報を、どう保存するか?です。ここについては、タイムスタンプまたは改ざん・削除ができないシステム運用のどちらかが必要とされてましたが、「社内の事務処理規定」があり、規定通り運用されていればOKとの選択肢が追加されています。しかも、国税庁サイトから「事務処理規定」のひな形がダウンロード可能なのです。とは言え、データ保存は義務です。検索しやすいよう「日付、取引先、金額、取引番号」などをExcelで検索簿を作成しておくのもありです。国税庁サイトで、この検索簿ファイルもダウンロード可能です。社内的に対応が難しい場合は、電子取引データを「破棄しない」ことが大前提ですが、①2期前の売上高が5000万円以下、②電子取引データを印刷して日付、取引先ごとに提示できる状態、のどちらかに該当すれば、検索機能は不要とのことです。会社規模により、以上の緩和措置で、かなり現実対応が可能ではないでしょうか。

意外と厳しいスキャナデータ対応

電子取引データの取扱いについては、続々と緩和措置が出ており、国税当局の現実対応として、インボイス制度に似たような展開となっています。ところが、スキャナデータについては、従来通り変更ありません。スキャナデータとは、電子取引データとは逆に、紙で受け取った請求書や領収書などをスキャンして保存したデータです。となると、スキャン後に原本を破棄してよいか?との疑問がわきますが、現状では相当厳しい要件がありますので、破棄はほぼ不可能です。結局、紙で受け取った請求書等については、スキャナデータを作成してもしなくても、税務調査時には、原本提示が原則になります。

税務調査現場での電子帳簿データ対応に注意!

電子帳簿とは、会計ソフトで出力される総勘定元帳や仕訳日記帳などのデータのことです。現状、これらのデータは保存されているはずであり、法人規模によっては、会社側には紙ベースしかなく、顧問会計事務所側で保存されていることになります。これまでの税務調査現場では、総勘定元帳データを税務調査官から依頼されても、紙ベースで調査するよう伝えて、データ提供を拒否するケースが多かったようです。電帳法運用がスタートした現在、「正当な理由なく」データ提供を拒否することはできません。

結局、どうすればよいのか?

検索機能不要になる要件については、すでに説明しました。もう一方の悩みの種「改ざん・削除の防止」についても、「相当の理由がある場合」かつ、税務調査の際にデータのダウンロードが可能で、出力書面の提示があれば、この要件も不要とされました。

結局のところ、電帳法対応は以下の通りと考えてもよさそうです。

①電子データを破棄してはいけない
②電子データは出力して、提示、提出できるようにしておく
③電子データは、②をPDFなどにより保存して、ダウンロードできるようにしておく


松本 直樹

松本直樹税理士事務所 税理士
https://naozei.jp/

石川県金沢市生まれ
金沢大学法文学部経済学科卒業
卒業後、証券会社で債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
証券会社を退職後、税理士事務所勤務
1997年 税理士試験合格
1999年 松本直樹税理士事務所として独立開業
2006年 株式会社ケーエムエスを設立
2014年 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年 合同会社「みんなで顧問」設立
2023年 マンガ本「みんなの相続」出版
2024年 一般社団法人みんなで顧問設立

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